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ゲーセンに行く途中。
近道の人通りが無い裏道。
ルンルンと楽しそうに笑う上機嫌の水谷を泉は横目に見た。
『泉ぃ?』
そんな視線に気付いたのか水谷が首を傾ける。
「ん?なんだよ?」
我に戻った泉が顔を逸らす。
『へへ、楽しみだねぇ。最初何する?』
水谷は泉の手を掴む。
驚いて泉は赤くなった。
《ちょ…っ、退いて貰えませんか…?》
〈ネェちゃん何?怖がってんのかなぁ?大丈夫だよ~俺怖い人じゃないしぃ〉
いかにも柄が悪そうな不良が女の子に詰め寄る。
その場面を見てしまった泉と水谷
「(げぇ…マジかよ。とっとと行こう…)」泉は心の中でそう呟くと視線を逸らす。
『ちょ…ちょっとぉ…っ!その子嫌がってんじゃん!やめてあげなよぉ!』
水谷がずいっと弱々しく近寄る。
近寄って今にも泣きそうな女の子をチラリと見るとその子は野球部のマネージャーの篠岡だった。
「み…水谷くん…っ」涙目で篠岡が見つめてくる。
「なんだぁ?ネェちゃんの知り合いかぁ…?」
『う…ッ、取り敢えず離れてよ!』
…何やってんだ俺…。早く助けろよ…。
泉は自分が情けなくなった。
ー…きゃぁあっ!
不意に響き渡る鈍い音と篠岡の悲鳴
腹を抱えてうずくまる水谷
助けないと…っ!
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