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あの時と同じ光景。
手を伸ばして掴もうとした俺の手をあいつは、閻魔刀で俺の手を傷付けて拒否をして落ちて行った。
それは、魔界への暗闇に一人だけ…死んだ親父の場所へと…。
今…まさにそうだ。
大切な人を助けられず俺は、空気を掴んだ手を強く、強く…拳を作り握りしめ血が滲むぐらいに力いっぱいに…。
「ユリア!!」
地面が崩れ落ちる前に気絶したユリアに気付くべきだった。
必死で、何度もユリアの名前を呼び目を覚まさせようとした。それでも、ユリアはピクリとも反応せず、死んだように眠っていた。
あいつのように人間を毛嫌いしていたユリアは、パティとだけは…姉妹のように仲が良かった。
どこか寂しげな顔をしたりしていたのは、自分がこうなることを分かっていたんだろうと思う。
「ダンテ。」
「分かってる。いつまでも、くよくよしていられないことぐらい。」
「そうよ!男がくよくよしていたら情けないわ!!」
「言うようになったな、パティ。」
「悲しいのは、ダンテだけじゃないのよ。私だって…。」
泣きそうなパティの頭を撫でてから俺は、歩きだした。
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