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玲旺の言葉に隼人はギクリと肩をすくませた。図星だったらしい。
なんて分かり易い反応をする男だろう。正直者というか、根が単純というか……。
こんな奴に嘘の伝言をするなんて無謀な賭けに出たな、と呆れてしまう。
「どうして分かったんだ?」
「いや、お前の顔を見ていたら分かるだろう」
玲旺の失礼な物言いに隼人は少しムッとしたようだったが、ここで言い合いをしても仕方ない、と思い直したらしい。
「じゃ、そういう事だから、頼むな」とだけ言い残して自分の教室に戻ろうとした。
あと五分で次の授業が始まってしまう。
しかし、玲旺はここで隼人を解放するつもりはないらしい。
ガッチリと隼人の腕を掴んで放さない。
「お前、聖世に余計な事を言っただろう?それで聖世はサボる事に決めた。違うか?」
「違うよ。神無月さんは俺と会う前からサボるつもりみたいだった」
あの時、聖世は口を滑らせて隼人に市立図書館で調べ物をすると言っていたから、隼人に会う前から授業をサボるつもりだったのだろう。
確かに隼人と話した後の聖世は何か目的のものを見つけたような表情をしていたが、この際それを玲旺に伝える必要はないように思えた。
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