98人が本棚に入れています
本棚に追加
/405ページ
7月。
そろそろ下旬に差し掛かる頃。
□■□■
キーンコーンカーンコーン
「じゃあ、終わるか」
担任のそんな声を聞き、委員長がすかさず口を開く。
「きりーつ、れー」
「ありがとうございましたッ!!」
いつもとは天と地とも掛け離れた挨拶をすると、一気に教室は喧騒に包まれた。
「8月25日からだからなー!
ハメ外しすぎるなよーッ」
そんな忠告をきちんと耳に入れた者はいったいどれほど居ただろうか。
「うし」
帰宅準備を終え、荷物を肩に掛けながら呟く仲森知景(ナカモリ・チカゲ)もその内の一人だ。
「チカ、帰りゲーセン行かね?」
「わっり!
ソッコーでバイト!!」
「せっかく今日から夏休みだってのにさー」
「ごめん!」
声を掛けてきた仲の良い級友に手を合わせ謝りながらチラリと教室の出入口に目を遣る。
一つ年下の少女が、どこか面倒そうに立っていた。
「てかお前、彼女待ってんじゃねーかよ」
「彼女?」
指摘すると級友は疑問そうに戸口を見遣る。
「げ」
「げ、はねぇだろうがよ?」
じゃ、と手を挙げて少女が居るのとは逆の出入口に向かう。
「彼女じゃない!」
という級友の声を背中で聞いて、廊下へ出た。
_
最初のコメントを投稿しよう!