1.仲森知景①

9/21
前へ
/405ページ
次へ
          ガタン、ドサッ 椅子ごと知景は横向きに床に倒れてしまった。 それに巻き込まれた織葉。 下敷きになりそうになった彼女を、どうにか頭だけは腕を回し守った。 「いったー」 「………怪我、無いですか?」 知景は肩を思い切りぶつけたが、同じように肩を床に叩きつけた織葉の無事を確認する。 「どこもかしこも痛い!!」 怨みがましそうに涙目になって見上げてくる織葉に、 「それだけ怒鳴れれば大丈夫ですね」 と静かに言う。 「それに、だいたい織葉さんが止めないからじゃないですか」 「だーって、ちーちゃ――」 「『ちーちゃん』は止めてください」 「――知景がいつまで経っても慣れないのがもぅ、楽しくって楽しくって」 自分の身体の下でにっこり笑う彼女の首を、このまま締めてしまおうかと思ったが寸前のところで思い止まる。 「ところで仲森知景くん」 「はい?」 _
/405ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加