挨拶の後はドッキドキ!?

3/6
前へ
/14ページ
次へ
強引に連れて来られた先は、生徒会室。 『…あの…?』 「これ、生徒会長から…着て。」 そう言って渡されたのは、この学園の高等部の制服。 「早く。まだ他にやることあるから。」 生徒会室の角にある、カーテンで仕切られた更衣室を指差されて、渋々そこで着替えることにした。 『なんであの人、俺の名前知ってんだ?』 小さな疑問を抱きながら着替えていると、二つのネクタイを見て不思議に思った。 「白いのが正装用だから。今日はそっちつけて。」 俺の考えを読むかの様に放たれたその言葉に苦笑を浮かべ、白地のネクタイを締めた。    着替え終わって更衣室から出た後、俺を此所へ連れて来た人がこちらを見て自己紹介をし始めた。 「俺は…生徒会副会長の、灰原七瀬。嫌いなことは、会長に負担がかかること。以上。」 それだけ告げられると、また腕を掴まれた。 『えっ…な、何?』 「始業式、始まるから。」 またもや強引に会場へと連れて行かれた     *     始業式での紹介が終わって、一息つく。 次は生徒会長の演説らしい。 副会長に後ろの席に座る様に指示され、席についた。 「皆さん、春休みを有意義に過ごすことは出来ましたか?」 『あの人が会長なんだ…』 遠くから見ても解る、金地に茶色いメッシュの入ったハッキリとした色調の髪色。 長さは少し長めのショートで、制服もキッチリと着ているのでとても清潔感がある。 顔は綺麗に整っていて、いわゆる美人顔だ。立ち方も表情も凛々しくて、男の俺でも見とれてしまうくらいだ。   俺は生徒会長の演説を聞きながらも、その容姿にただ見とれていた。 生徒会長の演説は完璧で、聞いていても全然飽きない。むしろ楽しいくらいだ。   会長さんて…演説凄く上手いんだなぁ…   迷いの無い瞳に、自信に満ち溢れた堂々とした態度。俺はソレに圧倒されていた。 俺…生徒会の手伝いどころか、足手纏いになるんじゃ…!? 不安が脳裏を過ぎって離れない。   完璧過ぎる生徒会長を目にしてか、それとも不安からか…俺は冷や汗を流して自分の世界へと入っていた。 物思いに耽るとは、まさにこの事だろう。俺は式が終わるまで、ずっと椅子に座ったまま固まっていた。      
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加