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「咲麻、もう皆退場したが…。」
灰原先輩に呼ばれて我に返り、慌てて立ち上がった。
「教室、案内するから。ついて来て。」
俺は言われるがままに副会長について行った。
*
結局教室に着いても俺は上の空で、自己紹介が終わった後はただボーッとしていた。
明日の連絡も聞けず、終礼の号令がかかるまで我に返ることは無かった。
そして、放課後。
「静…だったよな?放課後生徒会室に来てくれって生徒会長達が言ってたぞ。生徒会の説明があるらしい。」
『あ、ありがと…ところで君、誰?』
銀色で肩までの長さの髪に、切れ長の眼。
スラッとした顔立ちで、身長は俺より高い。
…何処かで見たことあるような…
「俺の名前は灰原悠李。生徒会書記2年だ。」
『灰原…灰原ってもしかして、副会長の親族か何か!?』
「七瀬は俺の兄貴。ほら、さっさと生徒会室に行って来い。」
『あっ、うん…』
逃げる様に(?)教室を出て、生徒会室へ向かった…が
『失礼します…』
ガチャリとノブを回す音を立てて室内を見回したけど、誰も居ない。
『あれ…誰も居ない。悠李って人、もしかして嘘ついたのかな?』
俺は鞄を教室に置いていたこともあり、再び教室へと戻ることにした。
*
『…あれ、まだ居たんだ?』
教室に一人、昼間の太陽に照らされた、同じクラスの灰原悠李君。
さっきの文句を言おうとして扉を閉めると、彼はこちらを向いた。
『あのっ…生徒会室誰も「待ってた。寮に案内するから、行こうぜ?」
鍵の付いた輪をクルクルと回しながら俺に向かって表情を変えずに問い掛けた。
『あ…う、うん。』
結局言おうとした言葉は飲み込まれて、ただ相槌をうった。
「あぁそうだ…俺、生徒会で書記やってんだ。二年だけど仕事出来るし、七瀬の弟だから大丈夫だろってことで任されてるけど、別に固くなる必要とか無いからな?同じ二年生なんだし。」
そう言って俺の腕を掴んで引っ張って行く。
やっぱり兄弟って似てるのかもしれない…
心の中で呟いていることを悟られないうちに、彼の言葉に応えた。
『ありがと、灰原。あの…寮ってどんな所なの?』
下駄箱に連れて来られて、靴に履き替える。腕は掴まれたままだ。
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