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寮の入口を潜ってすぐの寮内のロビーは広くて、名前を書く紙と、それを挟んだバインダー、ボールペン等が高さのあるテーブルの上に置かれていた。
「寮に戻って来たら、まずここに名前を書く。いいな?」お手本を見せると言わんばかりに、先に名前を記名する悠李。その字は凄く綺麗で達筆で、大きさや幅も整っている。
「次、お前の番な。」
『えぇっ!?』
む、無理だよっ!こんな字の綺麗な人の次に書くなんて恥だ!
癖字で女の子みたいな字を書く俺にとって、これはとても恥ずかしいことである。
暫く紙と睨めっこして書くのを躊躇っていると、悠李が急かす様に呟いた。
「早く名前書かないと、鍵もらえないんだけどなぁ…」
慌てて書き始める俺。だって人を待たせるのが嫌いだから、書かない訳にはいかない。書かないと迷惑もかかるし、俺自身も困る。
下の名前も書いている時、悠李が小さく笑った。
「クッ…お前の字、可愛いんだな。すげぇ可愛い筆跡……ふーん、咲麻…、しずか?」
『せ・い……だ!!』
「ククッ、悪ぃ悪ぃ。」
謝る気無しの悠李にからかわれた俺は、何故かムキになって反抗していた。
「よし、お前今日からしずかちゃんな。若しくはサクちゃん。」
『な、何言ってんだよ!絶対嫌だからなっ!!』
「あはははっ、お前そんなことでムキになるなよな。マジ笑える。」
お腹を抱えて笑う悠李。正直段々腹が立って来た。
そんな俺に気付いたのか、悠李は一つ咳払いをして切り換えた後、俺の手を引いてエレベーターへと乗り込んだ。
…相変わらず顔は笑ったままだったけど。
でも、綺麗な笑顔だったな、なんて…
死んでも言わない。
挨拶の後はドッキドキ!?完
続く
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