挨拶の後はドッキドキ!?

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    *     寮の入口を潜ってすぐの寮内のロビーは広くて、名前を書く紙と、それを挟んだバインダー、ボールペン等が高さのあるテーブルの上に置かれていた。 「寮に戻って来たら、まずここに名前を書く。いいな?」お手本を見せると言わんばかりに、先に名前を記名する悠李。その字は凄く綺麗で達筆で、大きさや幅も整っている。 「次、お前の番な。」 『えぇっ!?』 む、無理だよっ!こんな字の綺麗な人の次に書くなんて恥だ! 癖字で女の子みたいな字を書く俺にとって、これはとても恥ずかしいことである。 暫く紙と睨めっこして書くのを躊躇っていると、悠李が急かす様に呟いた。 「早く名前書かないと、鍵もらえないんだけどなぁ…」 慌てて書き始める俺。だって人を待たせるのが嫌いだから、書かない訳にはいかない。書かないと迷惑もかかるし、俺自身も困る。 下の名前も書いている時、悠李が小さく笑った。 「クッ…お前の字、可愛いんだな。すげぇ可愛い筆跡……ふーん、咲麻…、しずか?」 『せ・い……だ!!』 「ククッ、悪ぃ悪ぃ。」 謝る気無しの悠李にからかわれた俺は、何故かムキになって反抗していた。 「よし、お前今日からしずかちゃんな。若しくはサクちゃん。」 『な、何言ってんだよ!絶対嫌だからなっ!!』 「あはははっ、お前そんなことでムキになるなよな。マジ笑える。」 お腹を抱えて笑う悠李。正直段々腹が立って来た。 そんな俺に気付いたのか、悠李は一つ咳払いをして切り換えた後、俺の手を引いてエレベーターへと乗り込んだ。 …相変わらず顔は笑ったままだったけど。 でも、綺麗な笑顔だったな、なんて… 死んでも言わない。       挨拶の後はドッキドキ!?完 続く
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