第六章 俺の戦い

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「この世界に来て、リーリア達には沢山助けられた。色んな奴とも会えたし、色んな戦いもあった。そんな中でな。最初の内は、リーリアのことが俺は好きになってたんだと思う」   猟斗の言葉を、リーリアは俯いたまま何も言わずに聞き入る。   猟斗は本当に独り言のように言葉を綴り続け、自分の想いを吐き出した。   駿、燈谷、道化師、皇女の事を除いて。   「今は、色々と思うところがあって、簡単に気持ちの整理がつかないからさ。リーリアには応えることは出来ない。だけど、守る。アルバスさんを探すって決めた時、自分に誓ったから」   「猟斗……」   猟斗が言葉を綴り終わった時、リーリアは彼の隣に移動して、座る。   彼は恥ずかしそうに頬を人差し指の指先でかきながら、彼女の方から顔を背けた。   「私、嬉しいな」   「な、何だよ……」   「だってさ、さっきの言った事だと。私は誰よりも優先ってことでしょ?」   少し、生気の戻ったリーリアの言葉に猟斗は恥ずかしそうに尋ねる。   リーリアはそれに嬉しそうに答え、笑った。   「あーあ、猟斗はきっとこれから女の子に苦労するぞぉ?」   「何でさ……」   彼女の飄々とした口調に、猟斗は口を尖らせて呟く。   「だって、こんな可愛い女の子ふったんだもん。当たり前でしょ」   「けっ、そんな事――」   リーリアの言葉に反論すべく、彼女の方を向きながら猟斗は口を開く。   そして、最後まで言う前に。猟斗は気付いた。   リーリアの頬を伝う、一滴の雫に。   「あ、あれ?おかしいな。もう枯れたと思ってたのに、涙」   ボロボロと流れていく雫を手で拭いながら、リーリアは言う。   「兄さんに離されてから、泣きつかれたのにな……。おかしいなぁ……」   「…………。なあ、リーリア」   必死に涙を拭うリーリアに、黙っていた猟斗は口を開いた。   彼女の口から出た、アルバスについての事を気にする前に。   「泣いても、いいんだ。泣いても……」   「猟……斗。猟斗……!!」   猟斗の言葉が、リーリアの心の中でせき止めていた何かを外す。   「あ……ああ……。うわぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」   そして、リーリアは猟斗の胸にすがりつき、大声を出して泣き続けた。
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