第六章 俺の戦い

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「ふ、フレイヤ!本気か!?」   フレイヤの言葉に、駿の今の状況がわかっている猟斗は慌てて尋ねる。   戦場で、もしもフレイヤが駿と会ってしまったら。   間違いなく、フレイヤは戸惑うだろう。   そして今の駿は、フレイヤを躊躇うことなく殺す。   そう猟斗は思っていた。   「本気も本気なのですよ、猟斗さん。それに、これは駿さんのためでもありますから……」   「…………」   フレイヤの戸惑いのない答えに、猟斗は何も言えず黙る。   そんな中で、リーリアが口を開いた。   「駿君のため……?」   「はい。あの人は今――」   リーリアの問いに、フレイヤは答える。   それは、その場にいた二人にとって、驚愕させるに値する答えだった。   そう、それは――。   「――執行者に属してますから」   「なっ……!!」   「えっ……?」   フレイヤは知っていた。   駿が執行者にいる事を。   その後、この事が、今まで話そうとしていた事ということだと彼女は説明する。   そして、レジスタンスに入ると決めたことと同時に、フレイヤはこの事を話そうと決めていた。   「本当は、ヴァルキリーさんにも言いたかったのですが……」   唖然とする二人をよそに、フレイヤはそう言った。   「フレイヤ……、それで本当にいいのか?」   そんな時、猟斗が口を開く。   猟斗は既に、駿達と戦う決心はしてあった。   それを、駿を一番慕っていただろうフレイヤも同じ決心をしているという。   それが、その姿が、あまりにも可哀想だなと、猟斗は思ってしまい、口にした。   「だけど……」   「駿さんが道を間違えたのならば、それを正すのは軍でパートナーを勤めてきた私の役目でもあります。例え戦う事になり、向かってくるならばそれ相応の対応もします」   猟斗はその役目は自分にある。   そうフレイヤに言おうとしたが、その覚悟を秘めた瞳に口ごもってしまう。   何を言われても意見を変えない。   その瞳は、そう語っていた。   「……わかったよ」   猟斗は、そう言って呆れたように装う。   心の内で、腕ずくでも止めたいという激情を抑えながら。
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