第六章 俺の戦い

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一方その頃、猟斗は喧嘩に勝利し大男を酒場の外へと放り出していた。   体や顔には複数の痣や傷があり、汗もかなりかいている。   彼は深呼吸をすると、カウンター席に座ってビールのジョッキに手をかけた。   「んぐっ!……ん、ん……」   口の中が少し切れていたようで、猟斗は一瞬だけ顔を歪ませる。   しかし、それでも飲むスピードを遅めずに一気にそれを飲み干した。   「猟斗!あんたねぇ!!」   「いや、悪い悪い。つい熱くなっちまって!やっちゃったんだぜ!」   ジョッキをカウンターに置くと、ヴァルキリーが怒声を上げて猟斗に歩み寄っていく。   猟斗はそれを反省の態度もなしに、笑いながら返した。   ヴァルキリーはそれを聞いた瞬間、顔を徐々に赤くさせていく。   「ばかばかばかばか!店のものあんなに壊して!どうしてくれるのよ!!」   「いや……どうしろって言われてもなぁ」   「いいよ、ヴァルちゃん。店で暴れてるの放り出してくれたんだ。俺は気にしてないから」   ヴァルキリーが思いっきり怒声を上げている中で、店長らしき男性がなだめるように割ってはいる。   彼女はそれが納得いかないようで、カウンターを叩いて猟斗の隣に立った。   「それでも!あの惨状はないでしょう!!」   ヴァルキリーは声を張り上げ、惨状となった喧嘩の跡地を指差す。   見事に壊れた椅子、机、食器その他諸々が、そこに散らばり、店員達がせっせと片付けていた。   「法術使って!あんた色んな人を巻き添えにする気だったの!?」   「あ……いや、うん。悪い」   「悪いで済まないわよ!ばか!!」   ヴァルキリーの言葉に、猟斗は何て言おうと思った挙げ句、頭を掻きながら謝る。   その惨状の原因となった法術、エーテルライトが勝敗を決したが、店のものを大量にぶち壊したのだ。   「まあ、いいよ。コレからはアイツもここには来ないって言ってたし」   「う……それでも……」   「それに、こんなボロい酒場でも案外儲けてるからさ。心配ないって」
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