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それから時間が進み、酒場が閉店した後。
ヴァルキリーと猟斗はレジスタンスの拠点への帰路を歩いていた。
その途中、猟斗はヴァルキリーから何故あの酒場で働いていたのかを聞く。
まず、あの場所は前回の執行者との戦いで参加していた一人で、ヴァルキリーや父親のナシムと仲が良く、度々足を運んでいたらしい。
そこで、たまたま出くわした主人に酒場を手伝ってくれと頼まれた。
それが事の理由だと、彼女は言った。
「だったら連絡しろよ。リーリア達も心配してたんだぜ?」
「ごめんね。でも……あの時はちょっとね」
猟斗の言葉に、ヴァルキリーは苦笑しながら返す。
そのまま言葉を綴ると、彼女はそれをしようと思った出来事を思い出していた。
それは、セリアに言われた言葉。
「あなたは弱すぎるのよ。私達と来て、もしもの時私達を守れる自信があるの?」
「もちろんありますよ。ちゃんと覚醒のコントロールだってできるんですから」
公園で、ヴァルキリーが連れて行ってと頼んだ時。
セリアは真剣な眼差しで、そう尋ねた。
ヴァルキリーはそれに当然と強気に返したが、セリアは表情を崩す事なく、更に口を動かした。
「だったら。そうね。『真醒』をしてくる相手だったら……どうする?」
「真……醒……?」
ヴァルキリーは、そのワードに耳を疑った。
「覚醒のその上をいく完全なる、覚醒能力。それを相手に、あなたは私達を守れるの?」
真醒。ヴァルキリーはそのワードを何回か聞いただけで、実際は見たことがない。
しかし、一度だけ。
前回の戦争で、元執行者幹部。その倒した執行者六亡星が内の一人が、真醒を発動したその跡を彼女は見たことがあった。
草木、建物、死体。全てが無く、平地となった戦場。
ナシムとアルバスが率いていた部隊を、危うく全滅にする直前まで追い込んだ力。
「私達ね……。一度、真醒を使う相手と戦ったのよ。それも、わざわざ私達を狙いに来た奴とね」
セリアの言葉に、ヴァルキリーは驚愕させられる。
「つまり。あなたが私達に着いて来るのは、自ら死地に飛び込むようなもんなのよ」
「それでも!」
「あなた。やっぱり自分が勇者の娘だって事の意味。わかってない」
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