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(あの時、私は何も言えなかった……。セリアさん。あなたは私に何を言いたかったの……?)
そう、歩きながら心の中で考えているヴァルキリー。
勇者の娘である事の意味。
それが、彼女にとって最大の疑問となっていた。
(真醒使い……。アルバスさん達を狙う事と何か関係が……?)
セリアの話の流れを考え、ヴァルキリーはそう思う。
自分自身の立場の意味。アルバス達と真醒使いの関係。
何もわからない。ヴァルキリーは頭の中でそう呟くと、溜め息を吐いた。
「あーもう、わけわかんない」
「そりゃあこっちの台詞だバカやろう」
彼女が頭をかきながら呟いた言葉に、猟斗は彼女の目の前に立って言い放つ。
それに驚いたヴァルキリーは一歩後退し、両手をあたふたさせて慌てていた。
「何呆けてんだよ。いくら呼んだって無視しやがって……」
「え?マジ?」
「マジ」
呆れて溜め息を吐く猟斗に、ヴァルキリーは続けるように溜め息を吐く。
「何か考えてるのはわかっけどよ。せめて返事ぐらいしろ」
「あ、うん。ごめん」
片目を瞑り、右手で後頭部をかきながら猟斗は唇を尖らせる。
ヴァルキリーはそれに素直に謝り、とりあえず今考える事は止めることにした。
「明日、リーリア達に謝っとけよ」
「うん。わかってる」
猟斗の言葉に、ヴァルキリーは頭を縦に振って返す。
その後、二人は何も話さずに黙々と歩き続けレジスタンスの拠点へと帰っていった。
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