第七章 猟斗と一緒

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夜、時刻は十時三十分。   猟斗とヴァルキリーは、中央都市ミッドガルドへと向かう馬車の前にいた。   彼らの周りには、見送りに来た祥子、ハル、リーリア、フレイヤの四人がいる。   「猟斗君……ヴァルキリー。中央都市への遣い、よろしく」   「わかってるわよ、赤兎」   祥子の言葉に、ヴァルキリーは穏やかな表情で返す。   一方、リーリアとフレイヤは猟斗の近くに寄り心配そうにしていた。   「忘れ物はない?ちゃんと挨拶はするんだよ?健康には気をつけてね」   「わーってるっつの。お前は俺の母親か。そんなに心配すんな」   「でもぉ、やっぱり心配だよぉ」   「まあまあ、リーリアさん」   まるで旅立つ息子を見送るようなリーリアの言葉に、猟斗は顔をしかめる。   そんな二人の様子に苦笑いを浮かべるフレイヤ。 そこには、何とも和やかな雰囲気が辺りを包んでいた。   「大丈夫だっつの。お前も、自分の体調管理ぐらいしろよ?」   「ちょっ、止めてよ猟斗。恥ずかしいって……」   猟斗はそう言って、微笑みながらリーリアの頭を優しく撫でる。   彼女はそれに力無く抵抗するも、まんざらでもない表情を浮かべ、頬を朱に染めた。   「何よ猟斗。鼻の下伸ばして……」   その様子を見ていたヴァルキリーが、誰にも聞かれないくらい小さな声で呟く。   しかし、それを祥子がしっかりと耳に入れていた。   「羨ましい?」   「ち、違うわよ!」   「そんな顔……してる」   唐突に聞かれて驚いたのか、ヴァルキリーは耳まで真っ赤にしながら彼女に反論する。   しかし祥子は無表情で返し、ヴァルキリーは唸りながら俯いた。   その様子に呆れるハルは、溜め息を吐く。   「さて、もうそろそろ出発していただきたいのですが」   「あ、ああ。わかった」   「そ、そうね。ごめんなさい」   ハルの催促に、ヴァルキリーと猟斗は少し慌てながら返す。   「じゃあ、リーリアの事。頼んだぞフレイヤ」   「はい!任されましたのです!」   馬車へ向かう前に、猟斗は笑顔を浮かべながらフレイヤに言い、彼女はそれに明るく返事をする。   リーリアはその後馬車へと乗り込んで行く猟斗に手を振った。   「頑張ってね~!二人とも~!!」   そう言って、リーリアは笑顔を浮かべた。
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