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「終わったぁ……」
緊張の糸が切れたのか、猟斗はストライクリレイピアを鞘に納めると地面に座り込む。
額に汗が吹き出し、彼はそれを服の袖で拭った。
そんな中で、ヴァルキリーが駆け寄ってくる。
その手には、食料や日用品をしまい込んだバッグがあった。
「お疲れ様。猟斗」
「お前もな。っで、どうするよこれから」
すっかりと夕暮れ時になり、紅に染まる空を見上げながら、猟斗は尋ねる。
ヴァルキリーは猟斗の隣にバッグを降ろすと、中から救急箱を取り出した。
「どうするって……。とりあえず、歩いて向かうわよ。はい、動かないで~」
猟斗の問いに答えながら、ヴァルキリーは救急箱から消毒液と布巾を取り出す。
そして、彼女は猟斗に出来た傷を治療し始めた。
「ちょ、ヴァルキリー!恥ずかしいから止めろ!」
「うっさいわね~。せっかく私がやってあげてるのよ?感謝をしなさい。感謝を」
頬を朱に染めながら、猟斗はヴァルキリーから離れようとする。
しかし、彼女はそれを許さず、口をへの字に曲げながら彼を座らせた。
「つか、歩いて向かうったって。まだそこそこ距離はあるだろ?」
「でも、戻るよりは近いわ」
猟斗の問いに、ヴァルキリーは消毒液で湿らせながら答える。
その後、彼女は彼の傷にそれを当てた。
「っつ……。にしたってよ。寝泊まりどうすんだ?」
「勿論野宿に決まってるわよ」
ヴァルキリーは言って、包帯を巻き始める。
「野宿って、マジかよ……」
右腕を差し出し、包帯を巻かれながら猟斗は左腕で額を押さえる。
そして、溜め息を吐いた。
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