356人が本棚に入れています
本棚に追加
夜。荷物から取り出した干し肉や、水。乾パンを手に、猟斗達は夕食を取る。
焚き火が絶えぬよう乾いた枝を放り込みながら、二人は地図を開いていた。
「ミッドガルドに行く前に、この村を経由して行きましょう」
取り出したペンで、ヴァルキリーはミッドガルドまでの道のりを書き込む。
そのルートは、少しばかり回り道だった。
村の名はミーレイド。ミッドガルドから見て北東に位置する村。
「たしかミーレイドは家畜の名産地。上手くすれば、馬が買えるかもしれないわ」
「馬……ねぇ」
地図を丸めながら、ヴァルキリーは嬉々として言う。
一方猟斗は、呆けた顔で火を見つめ、小さく呟いた。
「なに、不満なの?」
「……。別に不満ってわけじゃねーよ。ただ、馬は俺。乗れねーぞ」
猟斗はそう言って、更に焚き火に枝を放り込む。
枝が火の熱で乾き、弾ける様な音を立て、燃える。
「大丈夫よ。そん時は私が教えてあげる。あんたは運動神経いいんだから、すぐ乗れるようになると思うわよ」
「…………そんなもんかねぇ」
ヴァルキリーは自信満々な面持ちで言い、猟斗はあくびをしながら返す。
その後、ヴァルキリーは立ち上がった。
「じゃあ、猟斗。火の番。お願いね」
そう言って、彼女は自分の武器を外し、抱えるようにして座る。
髪を結っていた紐を解き、マントにくるまり、ヴァルキリーは瞳を閉じた。
「これだから野宿は辛いぜ……」
あくびをかみ殺し、猟斗は呟いて傍らにストライクリレイピアの納まった鞘を置く。
そして、その後交代の時間になるまで彼は延々と火に薪をくべていった。
最初のコメントを投稿しよう!