第七章 猟斗と一緒

13/43
前へ
/339ページ
次へ
夜中。ヴァルキリーは小さく寝息をたて、彼女の愛剣、ブレイブブレイドの納まった鞘を抱きながら眠っている。   一方猟斗は、相変わらず火の番をしており、眠そうにしながらもしっかりと見張りをしていた。   「……。不眠で歩くのは、絶対嫌だ」   ぐっすりと睡眠をしているヴァルキリーを恨めしそうに見ながら、猟斗は愚痴を呟く。   そんな時だった。   何かの遠吠えが彼の耳に入って来たのだ。   「っ!!」   それに反応した猟斗は、傍らに置いていたストライクリレイピアの鞘に手をかける。   ちなみに、彼らは今森の中にいる。   森の中では、野生の動物や魔物が闊歩しているのだ。   「狼……か?」   遠吠えの主を想像しながら、猟斗はストライクリレイピアを抜いた。   しかし、刃は形成していない。   魔力を無駄に消費しないためである。   (……おかしいな。狼の遠吠えなら、何度も聞こえてくるはず)   猟斗は、そんなことを思い、しかし警戒を怠らない。   そんな時だった。   ヴァルキリーの寝ている木の後ろの茂みから、音が鳴ったのだ。   「誰――――!!」   「誰だ!!」   猟斗が叫ぼうとした時、遮ってヴァルキリーが叫んでいた。   手にはちゃっかりと抜き身のブレイブブレイドが握られている。   刃を茂みに向け、彼女は殺気を放っていた。   (……セリフ取られた)   一方猟斗は、そんなことを心の中で呟く。   不謹慎である。   「わたしに、刃を向けないでおくれ」   そんな時、茂みから女性の声が発せられる。   「姿を現せ。こちらが安全だと確認しだい、武器をしまうわ」   「…………」   ヴァルキリーは警戒から刃を向けたまま返し、猟斗はそれにあわせて臨戦態勢になる。   女性の声はそれに何も返さず、しばらくその場に沈黙が降りた。   「わかりゃんした」   二、三分経ってから、女性の声はそう言った。   そして、声の主は茂みから現れる。   「わたしは武器を持ちませぬ故。刃を降ろしてくりゃれ?」   「な――っ!?」   「はぃぃぃぃい!!?」   姿を現したのは、案の定女性だった。   しかし、その格好に猟斗達は驚いて声を上げる。   その格好とは……裸だったからだ。
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

356人が本棚に入れています
本棚に追加