第七章 猟斗と一緒

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しばらくして、茂みの奥。   「すまぬな。こんな夜分故、怪しまれて当然かのう」   「いいえ。大丈夫です。いきなり刃を向けたこと、お詫びします」   女性の言葉に、ヴァルキリーは自分の替えの服を渡しながら謝る。   「わたしは半人の者、そのような言葉遣いはいらぬ。もっと砕けてもよいぞ?」   女性はそう言って、穴を空けたスカートから出た艶やか尻尾を振った。   頭にある耳。鋭い爪と牙。ふさふさな尻尾。   スタイルもよく、顔つきも凛々しい。それが彼女の外見である。   ちなみに、半人とは何らかの術式で人ではなくなった者の子孫たちを指す。   その身には様々な獣のような特徴が現れ、地方によっては虐げられているのだ。   「そう?じゃあ、改めてごめんなさい」   「謝る必要もありゃせんて」   ヴァルキリーの言葉に、女性は笑顔で答える。   「もういいか?」   「ええ、大丈夫よ」   そんな中で猟斗が薪をくべながら大きめな声で尋ねる。   その頬には殴られた跡があり、彼はそれをさすっていた。   「さあ猟斗。謝りなさい」   「……何をだ?」   茂みから戻ってきたヴァルキリーは、笑顔で猟斗に言い放つ。   しかし、猟斗は何のことかサッパリな様子で、眉間にしわを寄せながら尋ねた。   次の瞬間、ヴァルキリーの右の拳が彼の顔面を捉えた。   「がんふぁーっ!!」   「この人の!裸を見たことを!謝りなさいって言ってるのよ!!」   顔面を殴られ、痛みに身悶えする猟斗に向け、ヴァルキリーは腕を組ながら叫ぶ。   「ありゃ、わたしは別に気にしてないでありんす」   「それでも!!」   「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」   女性の言葉をはねのけ、ヴァルキリーは猟斗の胸倉を掴み前後に激しく揺らす。   彼はそんな中でずっと謝り続けた。
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