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宮沢は笑みを堪え、真剣な表情を作る。
確かに、話題不足のMAMとしてはこの上ない程の出来事であった…が、総合格闘技の舞台はエンターテイメントでは無く、あくまでプロのスポーツなのだ。
基本的に筋書きの無い舞台であり、試合以外の場所では、いかなる暴力行為も許されないのである。
「ガンダレイ・キラーがこのまま黙ってると思うか?彼は偉大な王者だ。
リングの中では獰猛なファイターだが、リングを降りれば『礼』をわきまえた紳士でもある。
君の昨日の行いは、明らかに『礼』を欠く行動であり、社会的な責任を求められる可能性だってある。
そこら辺を君はどう考えてるんだ?」
実は、既にガンダレイ・キラーには話しをつけてあった。
多少強引ではあったが、多額の謝礼金と、そして、王者であるキラーの尊厳を上手く擽り、なんとか問題を最小限に留めたのだった。
それも全て、宮沢の一存である…。
「僕は…プロレスラー・宮沢公治なら、このシチュエーションを利用しない訳が無いと信じてます。
今のスパーを見た後なら尚更ね…。
そして、王者キラーという男も、やられたままで黙っている奴だとは思ってません。
借りは必ず自分の拳で返す男だって…ね…。」
銀髪が真っ直ぐな眼で宮沢を見た。
その、確固たる自信を秘めた眼に、宮沢は確信を持った…。
この男が…MAMの救世主だ………と。
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