銀髪の悪魔

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「駄目だなこりゃ…」 KD新聞格闘担当記者・『杉田寿一(スギタ トシカズ)』が寂しそうに呟いた。 さいたまハイパーアリーナの客入りは7割りといった所。 日本最大…いや、世界でも屈指の格闘技イベント『MAM』。全盛期は超満員が当たり前だったが、近年は動員数も陰りを見せていた…。 試合はメインイベント、日本人エース候補である『中田利博(ナカタ トシヒロ)』が、ミドル級の絶対王者『ガンタレイ・キラー』に挑んでいた。 中田は、実力はあるのだが、決め手に欠ける試合が多く、勝敗は常に判定という、お世辞にも『華』があるとは言いがたい選手である。 一方の王者・キラーは、当時ピークを迎えていたMAMのエース『宮沢公治(ミヤサワ コウジ)』を、回転のいいパンチの連打と、必殺の膝蹴りで敗り、以来無敗を誇るミドル級の『絶対王者』である。 試合は開始から6分が経過し、両者の顔色は明らかに明暗が別れ、誰が見ても中田に勝ち目があるようには写らなかった。 「中田もやはり駄目…これでしばらくはまた外国人選手の天下ですね、杉田さん…。」 杉田の脇で、KD新聞カメラマンの『安久津 誠一(アクツ セイイチ)』が囁く。
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