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屋敷に帰った少年は父の帰りを待っていた。
「今、帰ったぞ~。」
父の声が響く、女中達は慌ただしく夕飯の用意をする。
父が食堂の席にすわると少年は話を始めた。
「父上、話があります」
「どうしたのだ?」
「私はしばらく身をひそめようと思います。」
少年の言葉に女中、父が動きを止めた。少年は父を見た。父は少年を真っすぐ見つめる。
「決して、女王陛下の、いえ、姉上の下で働くのが嫌なわけではないんです」
「ならば何故だ?」
「私は十歳からつい最近まで大陸中央の同盟国のファイン王国に留学してましたが・・・おそらく後4、5年で大陸は戦乱の世になります」
少年の言葉に父は首を傾げる。
「大陸は今、六ヶ国時代と呼ばれ、ここ50年は何事も起きていない。なのに、ここ数年の内に起きると?」
「はい、今、最大の勢力を誇るファイン国は国王派、副国王派に別れて対立しています。内乱が確実におこります。それを北の雄・ベルトリア帝国が見逃しません。ベルトリア王は野心が強いですから。そして我らがリア・ファル公国に隣接するサリア自治区。ここは小さな国が集まって出来た連合国家ですが、現在の盟主はジョゼと言う名の男ですが、これもまた動くと思われます。そしてこの国は肥沃な土地を擁しています。サリア自地区は商業都市です。商、農を押さえれば大陸を制覇できるでしょう」
少年はそこまで言うと父を見つめた。
「それでどうしてお前が身をひそめる事と関係があるんだ?」
「我々もまた一枚岩ではないと思われます。おそらく不満分子は王宮内にいます。自分で言うのも何ですが、私はその不満分子にとって目の上のたんこぶな訳です。いなくなってから2、3年でおそらくクーデターが起きます。その時に不満分子を一掃します。その時再び私は姉上の、いえ、女王陛下の盾となって働きましょう」
少年は父をしっかりと見つめた。父はその目を見つめ頷いた。
「わかった。お前の力はこの国に必要だ。だから、必ず戻ってこい」
その日の夜。満面に光る星の中に一つ輝きがました星があった。
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