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フェイは来た当初は旅にでては何ヵ月も帰らなかったりしていた。しかし、この一年は全く動いていない。バレギロ司祭はため息をついた。
「フェイ様、あなたの才能はこんな所で終わるものではないはずです」
フェイを幼い頃から知っているバレギロ司祭は彼の才能を愛していた。彼がいたからこそ、こうして王宮を後にしたのだであった。
「現・女王陛下を支えていくのはあなたしかいません。療養や休養ならもう十分でありませんか?」
「私は療養や休養で、ここにいる訳ではないんだよ」
バレギロ司祭はフェイの目を見た。深い知性を兼ね備えた目であった。
「ところで、何か用があって来たんじゃないんですか?」
「お手紙が来てました。何かの間違いと思ったんですが・・・」
その目に、圧倒されていたバレギロ司祭はふと我に返り懐から手紙を出した。
フェイがリースの町にいること、そしてバレギロ司祭を頼っていることは誰にも知られていない。
それ故にフェイに手紙が来た事はフェイの居場所が何者かにばれた事になる。
「姉上からですよ。姉上だけにはここにいることを教えてますから」
バレギロ司祭はフェイの言葉に驚いていた。王都の人間にここにいる事がばれないように頼んだのは他ならぬフェイ自身であったからである。
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