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「……カムロ、世界を正しき道へ導きますか?」
「どう……すれば。僕はどうすれば、いいの」
戸惑いが波のように押し寄せて僕を飲み込んでいく。
「助けたいのであれば、世界を救うしかありません」
僕はフィーネから目を逸らした。
一瞬悲しそうな顔をしたフィーネが見えたけど――
「ぼ……僕はっ」
僕は分からないけど叫んでいた。
何が出来るかなんて僕自身も分からない。
でも、助けたい。
みんなを助けたいこの気持ちだけは本当だ。
「助けたいんだ。母さんを……ユズをっ」
「……カムロ」
優しい声が聞こえた。
僕に響くフィーネの声は優しさに溢れていた。
その声を聞きながら僕はいつの間にか泣いていた。
悲しいから? 怖いから?
そんな事ではなくて、分からないけど僕は泣いていた。
「助けたいんだ……みんなを」
「カムロ…行きましょう」
フィーネは僕の手をとり、ゆっくりと立ち上がっていく。
その手の温もりはユズの温もりとは違う。
でも、安心できる温もりが手を通じて僕の身体中に伝わっていた。
「助けるために行きましょう」
「どこに……?」
フィーネはゆっくりと空を見上げ、僕も同じように空を見上げた。
空は輝いている。
石板は光を放ち、大地を明るく照らすと同時に、道を示すように空の彼方へと光が続いていた。
「世界の果て……世界樹の元へ」
フィーネが僕を促す。
僕は立ち上がり、フィーネの隣に並ぶ。
優しく微笑むフィーネは僕の手をしっかりと握っていた。
『時の導命板』――残り四九枚。
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