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僕たちは歩いている。
村を出て幾日も経ち、どれほどの距離を歩いたのか分からないけど、世界の果てにあるという『世界樹』の元へ歩いていた。
そこに何があるのか、何をすればいいのか、そんな事は分からないけど、みんなを助けたい一心で僕は足を前に進めていた。
「フィーネ、世界樹ってどこにあるの?」
「この先……世界の果てにあります」
フィーネは遥か向こうを指差しながら教えてくれる。
僕の住んでいた村から遥か西の大地にある大きな山を越えた先に世界樹はあるらしい。
世界樹の存在は伝説として語り継がれているだけで、実際に目にした人は今まで誰もいないと言われている。でも、伝説になるのだから誰かが見たって事なんだろうけど今はそんな事はどうでもいいか。
……早く行かなくちゃいけない。
僕の目に入ってくる景色は僕の知っている景色ではない。ゆっくりと黒く染まっていく大地、草も木も、全てが黒く染まっていき、不気味な世界へと変わり始めていた。
途中立ち寄った町でも何もかもが黒く染まって止まっていた。
誰も動いていない世界――。
「急がなければ……」
「本当に何も動いていないんだね……何も」
そんな世界で一人だけ動いている僕は、気が変になりそうなのを必死に我慢していた。
「ええ……今この世界に動いているのは、カムロ……あなただけ」
隣を歩くフィーネの声が聞こえるが、どこか寂しそうに聞こえていた。
僕と一緒に世界樹を目指すようになってからフィーネは少し変わってきた。
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