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森は静かに謳（うた）っている。鳥が、木々が、優しく穏やかに響く森の声は世界を癒していく。
「今日もいい天気だね」
「そうね。気持ちいい風が吹いてるわ」
優しく微笑む声に、僕も笑みを浮かべて返す。
隣にいるのは、幼なじみのユズ。
青く長い髪が風に揺れ、優しく細めている瞳は薄い緑色。スラッと伸びた鼻に綺麗なピンク色をした唇。とても綺麗で、二つ年上のお姉さんみたいな存在。
僕の大好きな人……。
「何、見てるの？」
「……空だよ」
ユズは木の切り株に腰掛けて空をぼんやりと眺めていた。木々の間から見える空をゆっくりと雲が流れていく。
青い空には空気が色付いたように輝きを放つ"もの"が浮いている――。
「今日も空は綺麗だね」
「そうね……。空の石板も綺麗に輝いているわね」
ユズは楽しそうに僕を見つめて微笑む。
空に浮かぶ鏡状の物体は『空の石板』と呼ばれるもので、この世界が生まれた時から存在する５０枚の浮遊する石板である。
何の目的で存在するのかは分かってないけど、あの石板のおかげで、この世界は緑豊かな大地と実りが約束されていると、偉い賢者様が言っていた。
「あっ……」
ユズの声にそちらを向くと、空に浮かぶ石板からきれいな光の粒が煌めきながら舞い落ちていた。
あの光には、この土地に更なる安息をもたらしてくれる力があるらしいけど、僕には難し過ぎて分からない。
「ねえ、ユズ――何して遊ぶ？」
「そうねえ……森の奥に行ってみましょうか？」
「うんっ」
僕の手を握って立ち上がったユズは、空いている手で服に付いた木屑を払い落としていたが、繋いでいる手を離そうとはしなかった。
ほんのりと温かい繋がれた手を見ながら、今日はどこに行って遊ぼうかなと考えていた。
いつもと同じ事をしても面白くないし、今日は違う事がしたいな。
そんな事を思いながら僕も立ち上がり、同じように木屑を払い落として一緒に歩き出そうとした瞬間――。
「うわぁ」
「きゃっ」
突然、激しい地響きと共に大地が揺れ始めた。
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