第一話:予兆

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 耳を劈(つんざ)く破壊の音が容赦なく辺りのものを巻き込み、身体は宙に舞っているように重みを感じなかった。  揺れは収まるどころか更に激しさを増し、木々は絶叫と悲鳴をあげて軋み、鳥の鳴き声、獣の雄叫び、色々な音や声が入り混じり、まるでこの世のものとは思えない地獄を味わっているように感じ、終わる事がないように思えるこの大地の揺れに飲み込まれないように、ただ過ぎ去るのを待つ事しか出来なかった。 「……止まっ、た?」 「じ、地震……? 大きかったわね。カムロ、大丈夫?」 「僕は大丈夫だよ。ユズは怪我してない?」 「私も大丈夫よ」  暫く揺れていた大地は次第に揺れの幅を小さくして、眠るように小さく収まりをみせていた。  しかし、辺りは今までの様相を一辺させいた。  幹の途中から折れた木、地面に散乱する木の実。木々から飛び立ち、空を埋め尽くす鳥の大群に僕達の近くを通り過ぎていく森の動物達。  そんな光景を見ながら何が起こっているのか分からないけど、ただ肌に刺さるように感じているのはとてつもない恐怖だけで、風が吹き抜けていくが先ほどまでの爽やかな風ではなく、妙に重苦しく肌に纏わりつくように感じた。
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