90人が本棚に入れています
本棚に追加
「全く、会議室では静かにせねばならんというのに……」
「せめて口か鼻のどちらかを解放していてくれれば……」
恨み言を言える程度には落ち着いた。
「それにしてもあれは……」
「ポ○モン」
少し押し黙ったのを見て、彼女は俺が分からなかったのだろうと思ったのか答えを告げてくれた。
「いや、それは分かる――問題は何でこんな所であれが流れているのかであって……」
そもそも地球は無接触世界とされていてあれを知る機会はない筈だ。
その事を告げると、やっと何が言いたいのか彼女は理解してくれたらしい。
「あの世界は技術はそれ程でも無いが、発想力は他に類を見ない程に素晴らしい物があるんだ」
そう言って彼女はポケットを探ると――この人も持っているんだ……。
「例えばコレなんか軽量で持ち運び易く、可愛い外見からは想像出来ないような砲撃魔法に匹敵する一撃を放てる……力不足を補うには丁度良い代物だ」
そこまで言われれば否定は出来ない気がして来たが……。
「質量保存の法則はどうなるんです? 流石にそれは無視出来ませんよね?」
その法則からはどんなに頑張っても逃れられないと俺は思っていた。
「ん~、詳しくは分からないがコレは召喚魔法を応用して、あらかじめ記憶してある情報を元に体を形成する……だからその法則に抵触はしないらしい」
つまり、中身は物理的には空という事らしい。
不可能と思っていた事がここでは可能になる事も有るらしい――まるで、いや正に夢の世界だな。
と、ここでようやくお互いに名乗っていない事に気がついた。
少し距離を取って気を付けをする。
「申し遅れました、私はキョウスケと言います、わざわざ時間を割いて頂いてまで案内していただきありがとうございます」
しっかりと礼をする……今出来る事はそれ位だった。
「気にしなくても構わないよ、未来の同僚になるかも知れないし……私はヨークシャ、いつか共に仕事が出来る事を願っているよ」
それでは、と彼女は立ち去った。
『私たちも大体見学は終えましたし、そろそろ集合場所へ向かいましょう』
相棒に促されて俺達は集合場所へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!