90人が本棚に入れています
本棚に追加
集合場所に移動すると巨大なホールに到着した。
人影もまばらで、何も無いその場所は明らかに暇を持て余して下さいとでも言われているようだった。
この場所に来る途中、丁度良い木陰のある休憩所を見た事を思い出し、俺はそこへ向かう事にした。
少し歩けばこんなに気持ちの良い場所に移動出来るのに――今もまだあんな場所にいるであろう方々に俺は同情した。
木陰に横になると、あまり眠って居なかったせいかあっという間に睡魔が襲ってきた。
「――後2時間はあるだろ? 30分前になったら起こしてくれ、流石に眠い……」
相棒の返事もろくに聞けずに夢の中へと落ちていった……。
――――
―――
――
「――……?」
誰かに呼ばれたような気がした……まあ、気のせいだろうと放置する。
「――キョウスケ……」
今度は確実に呼ばれた上に、どうやら揺すられているらしい。
それでもまだ睡魔に打ち勝つには程遠い刺激である。
「――そろそろ起きないと試験に影響も出るし……」
どうやら俺の心配をしてくれているらしい――俺の感謝の気持ちが睡魔を……。
「――電撃でも放って起こしてあげようかな?」
「――待て! 誰だそんな不穏な独り言を呟いてる奴は!?」
……押しのけるより先に生存本能が覚醒を促した。
「ん? ……あれ、スピカ? どうしてここに?」
「――おはよう、キョウスケ……私も試験を受けに来たの」
試験――この場にいる以上、可能性は限られていた。
「あれ? たしか試験抜きで入隊資格を得たって言ってなかったっけ?」
犯した罪――とは言え、ほぼ無実に近い形で落ち着いたが――を償うために彼女は保全隊の活動に参加し、過酷な(本人曰わく簡単な)雑務をこなし、その実力が認められて保全隊の入隊資格を得たらしい。
「――裏口入隊みたいで嫌なの」
生真面目というかなんというか――実力を試験で測るのと結果で測るのになんら変わりはないと思うのだが……。
最も、そんな事を言えば彼女が黙り込むのがわかりきっていたので指摘はしなかったが。
最初のコメントを投稿しよう!