プロローグ

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 どうやら、私が一番乗りだったようだ……。  王家の墓所で数え切れない十字架の中、4つの黒色の直方体が鎮座していた。 『渡辺恭介 享年38――A.C.2028/9/27』  その内の1つを私達家族や親しい知人にのみに伝えた、お父さんが少しひねった言語変換術式ではそう読み取れる……。  あまりにも短い生涯だった。  そのまま他のお墓も見ていく……。 『渡辺宗一 享年38――A.C.2008/4/16』 『渡辺沙夜 享年35――A.C.2005/9/27』 『アリス  享年――  A.C.2010/9/26』  宗一さんと沙夜さんはお父さんの両親でとても良い人達だったらしい――とツェリさんが言っていた。  だけど、アリスという人が何者なのか……誰も教えてくれなかった――お父さんはただ一度だけ、大事な半身とも呼べる存在だったと漏らしていたが……。  何となく普通の言語変換術式でお父さんの墓石をみた。 『キョウスケ・グランディア・リースティック 享年38――3627/1/9』  こちらの方が世間に良く知られているお父さんの名前だ。  数奇な運命を辿った英雄――神代の魔法使い達ぐらいしか使えなかった心象魔法の使役者、始祖龍と渡り合った最強の魔法使い……。  近代の魔法使いの中でお父さんより強い人を私は知らない。 「お父さん……あなたの家族がまた2人増えました――あなたは結局何をしたかったのですか? 人一倍駆け回って、無茶を繰り返し、自分より他人を優先して――片腕を失う大怪我して……」  それでも立ち止まらないで、家では笑顔で……。  やっぱり、お父さんの事はわからない事だらけだ……。
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