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side 恭介
待ちに待ったこの日が来た……。
自分が保護対象としてではなく、保全隊の隊員足り得る者かが左右される日である。
あまりにも待ちきれずに学校を1日サボって早くこの世界へと来て、興奮してあまり寝付けなかった。
我ながら子供だと思う。
この世界はミツェルネティア……俺の通う学校があるクサンフィアナとは並行世界の関係で魔法と科学が両立した稀有な世界である。
そして今日、ここの保全隊の基地が試験会場兼『移動本部』となる。
保全隊の『本部』と言えばとある3つの世界にある拠点を指すらしいが、大きな作戦などではどうしても後手後手に回ってしまう。そのため、保全隊の中枢が定期的に世界を渡り着いた先が『移動本部』となるというシステムがある。
これは隊員の品格や練度の維持も目的らしい。
まあ、確かにいきなりお偉方が来たのなら焦るから緊張感は保てるだろう。
驚いた事にエリック達成績上位陣は大半が一年前には入隊の試験を合格しているらしかった。
今回試験を受ける仲の良い知り合いはアイリス位だ。
アイツは数ヶ月前は飛行魔法すら下手だったのに今ではメキメキ上達している――次のテストでは魔力に多少の難はあるが、学年一桁の順位も狙えるだろう……隠れて彼女の練習に付き合っている身としては嬉しい限りだ。
会場の前に立つ看板を見て足を止めた。
『保全隊入隊試験会場』
「――ふぅ……」
ため息が漏れる……ここまで本当に来たという感動に似た何かが俺にそうさせた。
入り口は俺の居た世界の町役場といった趣だが、地図を見て敷地の広さが段違いだった。
敷地内に隊員の宿舎が並び、東京ドーム以上の大きさを誇る研究施設兼部隊の活動拠点があり、残りは明らかにいらないだろうというほどに広い訓練所があった。
「――さて、行きますか……」
本部では無気力で動かなかったし、目的が出来たらすぐに飛び出してろくな見学をしていなかったのだ……今回は自分の目で保全隊を見れるので楽しみだった。
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