その時は薄暗かった

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「え?《特急》ってことはJRじゃないの?」 と、マサルは助手席のキョウイチに聞く。JRなら《特快》だからだ。   H駅はJRの駅と、私鉄の駅がふたつあり、徒歩で数分かかるくらい離れている。   マサルは焦った。   今、一方通行の裏道で、JRの駅を目指しているのだから。広いほうの駅前ターミナルを。   「あ、走ればすぐだから、あっちに回ってくれなくていいよ」 とキョウイチが言ってくれて、マサルはホッとする。   私鉄の駅方面は、一方通行の道が入り乱れているので、あまり行きたくなかったのだ。それに今から迂回すると、完全に時間がオーバーしてしまうから。   裏道でのショートカットに効果があって、余裕がある時間に駅前に着いた。歩いて駅に向かっても、ひとつ前の特急にも乗れるかもしれない。   コイン駐車してある車の脇で、少し距離を置いて、十分な降りるスペースを確保してから、キョウイチを降ろす。   「ありがとう。じゃ、ふたりともまた~」 と、小雨の中、コートをマントのようにひるがえして、駅のほうに向かったキョウイチに、すさまじい怒声が浴びせられる。     「待てや、コラッ‼このクソガキが、オラァ‼‼」 誰がどう見ても、恐ろしいオジさんが激怒していて、キョウイチを呼び止めていた。
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