いいから君は行くんだ!!

その人は恐かった

怒鳴りつけられたキョウイチは、怪訝そうな表情を浮かべて、小雨の中、傘をささずに、立ち止まる。

「何か？」

「《何か？》じゃねぇ、このボケが‼人の車に傷つけやがって‼」

「は？」

「《は？》じゃねぇんだよ‼こっち来てココを見てみろ!!」
黒い折りたたみ傘をさしているオジさんが激怒している。

傷などつくはずがないと思っているキョウイチは反抗的だ。

「どこですか⁉」

「ココだよ、ココ‼わかんねぇのか⁉」

「傷ついてないみたいですが…」

緊急事態だ、と判断したマサルは、急いで運転席から降りると、ふたりに駆け寄った。

「どうしましたか？？」

冷たい小雨は遠慮なく降り続いていた。