自転車は進む、されど止まらず

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 さきほどまで肩で揺れていた髪も、落ち着きを取り戻しはじめる。  道路と本屋の駐輪場をつなぐ曲がり角に差しかかったとき、薄暗闇の中に人影をみつけた。  夏美は動かない人影に向け、ベルを鳴らす。同時にブレーキをかけた。  ペダルを漕ぎやめたとはいえ、まだかなりの速さが出ている。  そして何より……人影を発見するのが遅かった。  ブレーキは自らの役目をこなし始める。  ベルに反応さ、振り向いた人影までの距離はすでに数メートル。
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