自転車は進む、されど止まらず

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「……っく」  人影は、上半身だけをゆっくりと起こす。  夏美はその人影の前で、両膝をついた。  人影――まだあどけなさの残る少女は、肩にかからないくらいの髪と紺のスカートについた埃や砂を払う。  そして、夏美の方を見ると、 「気にしないでください、夏美先輩」  少女は夏美の手を借り、ゆっくりと立ち上がる。屈伸をしたり足首を回したりして、どこか痛めていないか確かめる。
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