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雄也が観光を終えて戻ったのは結婚式の前日だった。昼過ぎに泥酔して1人で帰ってきたのだ。
「兄ちゃん、酒飲みすぎ!」
叱りつける善に雄也は口が回らないまま何かを言って眠ってしまった。
そんな雄也にここ数年は見ないで済んでいる父親の姿を重ねて少し嫌悪感を感じた。
そして、そのまま朝を迎えた――。
「冬樹、兄ちゃん。起きて!」
2人の寝る布団を強引に畳んで善が起こした。
「……善、水くれ………」
雄也が二日酔いでぼろぼろな表情をして言った。
「はいはい……。冬樹も起きな」
水を渡して冬樹を起こすが、冬樹は熟睡している。
「つか、お前……何も朝5時に起こす事ねぇだろ………」
雄也が時計を見て善に言った。
「場所も、時間も聞いてないんだよ?早く起こした程度で文句言わないで」
雄也に詰め寄った善がそう言った。
「………場所は、あれだ。東京で一番デかいホテル。そこの……まぁ行けば分かる。あと、時間は午後の3時から。正装しろよ。なかったら買ってこい。冬樹の分も」
言って雄也が善に財布から万札を数枚出して渡した。
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