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「何がなかったら買ってこい、だよ……」
ぶつぶつ言いながら善は真新しいスーツに袖を通した。薄い青色のワイシャツのボタンをしっかり止めてネクタイをする。
「よし、完璧」
鏡の前で軽く自分の姿を確認して善は少し髪の毛をいじった。
「兄ちゃん、こんなもんでいいの?」
「あぁ、いいんじゃねぇか」
雄也は冬樹に七五三の様な服を着せていた。
「でもさ、こんなしっかりしなきゃいけないの?」
「当たり前だ……。世界中の金持ちや大企業の社長。他にも石油王や首相まで招かれているんだ。そこに行くのに半端な格好だったら浮くぞ」
雄也が冬樹の身だしなみを整えて自分の髪の毛を見た。
「……下ろすか」
無造作に上へ上がっている髪を下ろして雄也はため息をついた。
「……堅苦しいのは嫌なんだけどな」
「あ、俺も」
兄弟が同意してため息をついた。
「じゃ、行くか」
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