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それから数十分がして披露宴が始まった。長い挨拶などの退屈なスピーチが終わり、潤が挨拶する番になった。
「皆さん、本日は僕達の為にお越しいただきまことにありがとうございます」
堅苦しい挨拶の言葉から始まり、潤が言葉をつむいでいく。経済の話題だったり、社会的な問題やその打開策など披露宴とは関係のない話題がされた。
「話が変わりますが、僕は今日、心から感謝をしたい人がいます。それは父、慶安剛です」
潤が脇の席で話を聞いていた父を見た。
「父は未婚です。そんな父に何故、僕が、息子がいるのか。僕が孤児だったからです。幼い時分に両親を亡くし、施設にいた僕を父は養子として迎え入れてくれました。しかし、父の様な立派な人物でも子育ては苦手な様で僕は今でこそ正直に申し上げますと、嫌いでした。会社も継ぎたくない、そう思っていました。ですから、勝手に家庭教師を解雇しその空いた時間に色んな趣味の時間を作ったりして、怒られた事もありました」
潤が言葉を切って父にウインクした。穏やかで暖かい瞳だ。
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