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「――……凄い」
冬樹が絶句してその演奏を聴いていた。
華やかでミスもなく、重なり合うギター。雄也と善のぴったり合った演奏はとても初めて合わせる物とは思えない完成度だ。
そして、それを支えるリズム隊。重低音で、ギターを浮かせずにかつ、目立たない訳ではないベース。
心地よいテンポを刻み、時に激しく、時に穏やかに様々なテクニックを披露するドラム。
その全てが互いを引き立たせ、邪魔をし合わない。4人の音楽は1つのメロディを作り、衝撃的に冬樹を突き抜けていった。
ボーカルはなく、純粋に曲として成立するそれに冬樹は感動をも覚えた。
「これが……ロック」
呟いて冬樹は自分の中で熱くなる物を感じた。それは夢中で雄也のギターを追い掛けた時と同じ気持ち。でも、今はそれ以上にこれを強く欲しく、感じた。
「Finish!」
雄也が叫んで、唐突に音が切れた。それまでの大音量が嘘の様に消えて一瞬の静寂が訪れた。
「善、ギター上手くなったな。あと太朗、お前は微妙にダメだ。少し慌てすぎ。で、亮は問題ない」
静寂を破って雄也が言った。
「――失礼します。皆様、準備はよろしいですか?社長がホールにてすぐにライブをしたいそうです」
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