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女生徒――辻井麻里に案内してもらい、善は校舎の東側に位置する4号館の4階にやって来た。 壁にスプレーなどで落書きされたり、床には多量のゴミが散乱している。 「酷いね、これ」 「あ、私……行くね」 「うん、ありがとね。案内してくれて」 善は階段を降りていく麻里を見送って、その教室のドアの前に立った。 「さて……嫌な雰囲気だけど行くか………」 ドアに手をかけて善がドアを開けた。 タバコの臭いが鼻をつき、中にいた生徒達が善を睨んだ。 「何だ?お前……」 「入部したいんだけど……。パートはギターボーカルで」 臆する事なく善は言った。だが―― 「ギターボーカル?いらねぇ」 その男は言って善の襟を掴んで中に連れ込んだ。 「軽音部なんてな、俺らの溜り場なんだよ……。入りたきゃ貢げ」 タバコの煙を顔に吐きつけられ、善はむせた。 「貢げって……いつの時代の人間?」 呆れ半分に言った。
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