とある一つの物語

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いつも通りの毎日を過ごしていた自分は、いつも通り学校に通い、つまらない授業を受けていた。 窓の外を見ると、黄色いグラウンドが広がっている。 どうやら、今は体育の授業は無いみたいだ。 もしあったのなら、それを見て暇つぶしをするぐらいできたと思う。 しかも今は、中でもダントツに暇な数学の授業だから、する事がないのは死活問題だ。 そんな大袈裟な事を思いつつも、握ったままのシャーペンを動かした。 Bの芯が入ったシャーペンが、真っ白なノートに線を書いていく。 (キチンとノートをとっておかないと後からうるさいから) 黒板に書き記されている数字や記号を、汚くも上手くもない字でそのままそっくりノートへ写す。 そのときだった。 視界の端に天使が舞い降りた。 嘘じゃない。 背中からは真っ白な翼を生やし、白い鎧のようなモノを全身にまとい、グラウンドの真ん中に突如現れた。 (なに?あれ‥‥) さらにはその天使を追うように、1人の少女らしき人影が校門辺りから走ってきた。 (これは夢‥‥?) 「結埼!」 ウルサい先生に怒鳴られて、気づいた。 驚きの余り立ち上がっていた。 「結埼、なにしてんだよ」後ろの席に座るクラスメートに問われ、「グラウンドに変なのがいるんだけど‥‥」と指を指す。 その言葉にクラスのお調子者グループが席立ちをして窓から外を覗き込み始めた。 後ろのクラスメートもチラと外を覗いたけど、「お前何言ってんの?」と返してきた。 確かにグラウンドでは鎧天使と少女らしき人影がいるんだけど‥‥ 「なあ、変なのってどこだよ」 お調子者グループの1人が肩を叩く。 「どこって、グラウンドのど真ん中‥‥」 もう一度指を指すのだが、周りから冷たい視線が飛んできた。うっと言葉を詰まらせ、「ほら、全員席に戻れ」と先生に諭される。 仕方なく席についた。
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