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その少女は突然ハッと顔を上げて、「今日はヤケに多い」と呟き、近くの山を切り崩したような土手の上を睨みつけた。
「アナタとの話は後!」
少女は飛んだ。
見上げるほどに。
10メートルはあるはずの土手の上に翼を広げて飛びたった‥‥
──絶対人間じゃない。
土手の上は公園だった。
息を切らしながらも走ってここまで登ってくると、少女と、またあの鎧天使が戦っていた。
少女は小さなハンドボウガンのような銃を両手に持ち、鎧天使を撃つ。
ガンガンと鎧天使の鎧に当たる。少しずつだがヒビが入っているように見える。
少女の銃の弾がまた鎧に当たり、バキンと鎧の一部が砕け、破片が散る。
鎧天使は一か八かと持っていた剣を投げつけた。
剣はクルクルと回りながら、物凄いスピードで少女に向かう。
ガン!
鉄の弾かれた音がした。
少女が剣を正確に撃ち落としたのだ。
すかさず鎧の砕けた部分に銃を乱射する。
鎧の中に弾が飛び込んでいき、鎧天使がよろけた。穴を塞ぐように手で押さえると、鎧天使は光に包まれ、そして一瞬で跡形もなく消えた。
あははは‥‥はぁ‥‥今日は愉快な日だな‥‥
もう、狂ってもいいんじゃないか、そう思った。
その前に、自分の頬をつねり、さらに殴った。
「痛ったぁ!」
赤く腫れたと思われる頬を撫でながら、やっぱり夢じゃないのか、と呟いたとき、あの少女が近寄ってきた。
「あなた、神様の側のクリエイター?」
あろうことか銃を向けてきた。
「ちょっと待ってよ!」
「何よ」
「僕、今どうなってるの?」
少女は安堵の息を吐くと、「違うみたいね」と言った。
ベンチに座るように言われ、大人しく座る。
少女は公園の自販機から缶ジュースを買ってきて隣に座る。
「何でアナタは私達が見えるの?」
「そんなの知らないよ、今日、グラウンドに突然出てきた変な天使が見えて‥‥」
少女がこちらをじっと見つめていた。
可愛い‥‥よね?
ドキドキと心臓が鳴っている。今にも音が漏れてしまいそうだ。
「他にそんなのを見たことは?」
少女は缶ジュースのタブを持ち上げて開け、口へ持って行く。
「今日が、初めてだよ」
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