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「私のことが人間には見えないってことはアナタももう理解してるよね?」
まあ、あれだけ周りに笑われたのだから理解ぐらいしている‥‥つもり。
「じゃあ、何故私がジュースを買って飲めたのかは?」
わかるわけがない。
「ま、そうよね」
無言で悩んでいると、少女がそう言う。
「これには別に深い理由があるわけじゃないんだけど、二階に住んでる人は一階のものを見ることができて、私が‥‥例えばここに落ちてた木の枝を拾ったよね、そうすると、その木の枝は人間の視界から消えて、触れることもできなくなるの」
「君が持ったものは見えなくなるってこと?」
「そそ、人間以外はね」
少女は木の枝で図の一階から二階に矢印を書き加えた。
「私が持ったものは二階に行って、一階の人からは見えなくなる。もちろん、持ったままそれで立てた音も一階には聞こえなくなる。神の力かな」
また神ね、そんな存在信じることができないけど‥‥
その時、一人の老人が元気そうにジョギングをしながら公園に入ってきた。
「ちょうどいい」
少女は缶を持ち上げ、ベンチで打ち鳴らした。
ガンガンガンガン!
ハッキリと聞こえる。
しかし、あの老人は聞こえてもいないようにジョギングを続けている。
「ね、聞こえてないでしょ?」
「ただ耳が悪いだけじゃないの?」
「あんな元気そうなおじいちゃんが?」
そして、少女は缶を投げる体制に入り、先ほど投げ入れようとしたゴミ箱に向かって投げた。
30メートルと少しあるはずのゴミ箱に見事に入り、ガシャンという音がここまで聞こえてきた。
老人はビクリとし、ゴミ箱を見ている。
「私が手から離せば、それは人間の視界に戻ってくるし、触れることもできるようになるってわけ」
もう、本当に現実じゃない気がする。
深い夢なんだ。
きっと‥‥
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