とある一つの物語

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男の部屋だというのに、無防備に寝入ってしまったアマネに布団を掛ける。 まだ訊きたいことはあったのだが、その前に休みたかった。 階段を降りて、台所でさっきの弁当箱を洗う母がいた。 「ハルカ、晩御飯のおかず何にする?」 階段を降りる音で気づいたのか、母さんはこちらにそんなことを訊いてきた。 「なんでもいいよ」と、愛想なく答え、冷蔵庫を開ける。 予想通り、箱が一つあった。 「ケーキ貰うよ」 「はいはい」 箱を冷蔵庫から引っ張り出し、中からショートケーキを取り出して皿に移す。 フォークでケーキのカドを切ると、口へと運ぶ。 甘いクリームが頭を癒やしてくれる。やっぱり、変な話を無理矢理頭に叩き込んだ後は甘いケーキが一番だよ。 しかし、やはりどうにも信じにくいなぁ。 いきなりグラウンドに鎧天使が現れたかと思ったら、それはクリエイターとかいう、神様だかが造ったモンスターで、それを倒して世界を守っている人たちがいるというのだ。いや、その人たちもモンスターだっけ。 どこのファンタジーの世界なんろうね。 そして、何故自分はそれが見え、触れたんだろ。 あの少女に言わせれば、そこが一番の謎なわけ。だから付いてきたんだよ。 まあそれは、ハルカ自身にとっても謎で、そんなものが急に見えるような実験でも寝ているときにされたのかもなんて思った。
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