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第9話 プロローグ
―5月20日(日)
―23:28 大和屋デパート
照明は落とされ 光のない大和屋デパート内を歩くために役に立つのは 懐中電灯だけ…
「じゃあ…見回りに行くか」
「……だな。ふあぁ~…
いい 眠気冷ましには なるかな」
大和屋デパートの警備員室――
ここには 三人の警備員が詰めている。いずれも 男性である。
「なら 俺と城で見回るから…
お前は ここで 監視してくれや」
「うぃーっす。了解です♪」
返事をした若い警備員はモニターに向き直った。
「城 行くぞ」
「はい」
城と呼ばれた警備員は 一番年配らしい30代の警備員室室長の後に続いて 歩き出した…――
「俺は こっちから見て回るから…――お前は地下 駐車場の方を見て回ってくれ…頼んだぞ?」
「――はいっ! 分かりました」
城は 快く返事をして 地下へ…
降りていった。深い闇の中へ――
「さて…こんな時間か――
急いで 見回るか…眠い…――」
室長は 少しふらつきながら…
暗闇の中を歩き出した。
今日は このデパートの店長が……警備員室にある金庫に従業員の給料を入れたので 特に注意して 警備が必要になっていた。
「以上…なしっと。良好だね♪」
警備員室に残った若い警備員は…
お菓子を食べながら コーヒーを飲んでいた。もう2杯目だ。
注意して警備しなければならないのに…まったく 困ったものだ。
しかも この時――
警備員室の外に…布を巻いた棍棒を持った人物がいた事には…――
もちろん 気づく筈もなかった。
「あっ! コーヒー飲みすぎた!
ちょっと トイレ行ってこよー」
若い警備員は 金庫の鍵も持たず…警備員室を後にした。
とても 不用心だな💧
誰もいなくなった警備員室に侵入する棍棒の影…その人物が目指すのは…もちろん…――
「ふぅ~…スッキリした♪」
若い警備員が 警備員室に戻って来ると…妙な違和感を感じた。
金庫に 目をやると――
なんと…少し開いていた。
そこで 若い警備員は…
金庫に近づき 中身を見た――
「――これは…!?」
「――お、お前!
何をしている?! まさか…!」
そこに室長が戻って来た。
「――ち…違います!」
「どうしたんですか?」
そこに 城も帰って来た。
暗雲 立ち込める警備員室――
そこには ただ…
空っぽの金庫が座していた…――
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