第9話 プロローグ

1/1
626人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ

第9話 プロローグ

―5月20日(日) ―23:28 大和屋デパート 照明は落とされ 光のない大和屋デパート内を歩くために役に立つのは 懐中電灯だけ… 「じゃあ…見回りに行くか」 「……だな。ふあぁ~… いい 眠気冷ましには なるかな」 大和屋デパートの警備員室―― ここには 三人の警備員が詰めている。いずれも 男性である。 「なら 俺と城で見回るから… お前は ここで 監視してくれや」 「うぃーっす。了解です♪」 返事をした若い警備員はモニターに向き直った。 「城 行くぞ」 「はい」 城と呼ばれた警備員は 一番年配らしい30代の警備員室室長の後に続いて 歩き出した…―― 「俺は こっちから見て回るから…――お前は地下 駐車場の方を見て回ってくれ…頼んだぞ?」 「――はいっ! 分かりました」 城は 快く返事をして 地下へ… 降りていった。深い闇の中へ―― 「さて…こんな時間か―― 急いで 見回るか…眠い…――」 室長は 少しふらつきながら… 暗闇の中を歩き出した。 今日は このデパートの店長が……警備員室にある金庫に従業員の給料を入れたので 特に注意して 警備が必要になっていた。 「以上…なしっと。良好だね♪」 警備員室に残った若い警備員は… お菓子を食べながら コーヒーを飲んでいた。もう2杯目だ。 注意して警備しなければならないのに…まったく 困ったものだ。 しかも この時―― 警備員室の外に…布を巻いた棍棒を持った人物がいた事には…―― もちろん 気づく筈もなかった。 「あっ! コーヒー飲みすぎた! ちょっと トイレ行ってこよー」 若い警備員は 金庫の鍵も持たず…警備員室を後にした。 とても 不用心だな💧 誰もいなくなった警備員室に侵入する棍棒の影…その人物が目指すのは…もちろん…―― 「ふぅ~…スッキリした♪」 若い警備員が 警備員室に戻って来ると…妙な違和感を感じた。 金庫に 目をやると―― なんと…少し開いていた。 そこで 若い警備員は… 金庫に近づき 中身を見た―― 「――これは…!?」 「――お、お前! 何をしている?! まさか…!」 そこに室長が戻って来た。 「――ち…違います!」 「どうしたんですか?」 そこに 城も帰って来た。 暗雲 立ち込める警備員室―― そこには ただ… 空っぽの金庫が座していた…――
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!