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「ブリーフからトランクスに変えたらさぁ。 小便した後、ちゃんと水切らなかったせいか、隙間からこうっ……」 椅子の前足を上げながら、紙パックに入ったオレンジジュースを握り締め、トシは言った。 「黙れ」 短く、角が立たない程度に俺は強く言った。 昼食の時間に限って、トシはとびきり下品な話をし出す。 「食事中だぞ。ったく、緑茶がマズくなったよ」 そう言いつつも、俺はペットボトルに僅かに残った緑茶を飲み干す。 市販の緑茶は緑というより黄色に近い。 それこそ、ラベルを取ったら飲みたくなくなるほどに、尿に近い色をしている。 「小便も緑茶も変わんないって、小便普通に飲んでるヤツみたことあるぞ」 「どこで?」 「AVで」 そんな馬鹿な答えに、半分本気で呆れ顔を作る。 トシと付き合ってると、これはわざとボケてるのか、それとも素なのかときどきわからなくなる。 ボケてるヤツは、結局そのネタバラしをしないわけだから、いつまで立っても疑問が解決する事はない。 だからといって、それがむずかゆいとか、気が晴れないとか、そんな事はないのだけれど。 「そっか、じゃ飲んでこいよ。そうだな……唯あたりに飲ませてくれって、頼んでこい」 「おう!」 と、意気込んで、トシは教室の一番前の席でボオッとしている唯の下へと走っていく。 田辺唯は、小学生からの俺らの幼なじみだ。 だから、トシの冗談の範囲も考えも、だいたいわかっている。 こういうのを、以心伝心っていうんだっけ?考えが、言葉も無く伝わる。 実は、これって結構すごい気もする。 トシが唯の前の席に腰を下ろす、そしていかにも重大な事を話すかのような面もちで口を開いた。 この距離じゃ話してる内容は、まったく聞こえないが、 しきりに頷く唯の姿からして、壮大な前置きを話しているのだろう。 こういう時、トシは何故か慎重だ。 学校の成績は、進級会議の常連だが、ポテンシャルは意外に高いのかもしれない。 案の定、唯がショートカットの髪を翻しながら、立ち上がる。 そして、これも案の定、トシも逃げるように走り出した。
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