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「うっさいわねぇ。耳が生えてて悪かったわね」
土管からのそりと、ソレが姿を現す。
長い漆黒の黒髪が、雨に濡れ、妖艶さが際立たされている。
白い一枚のTシャツは、雨によってピッタリと、体にへばり付き、その体をすべて透かしてみしていた。
そこそこ豊かな乳房も、そのピンク色の頂も、そして、下半身の陰りもうっすらと。
だが、本人はそんなの意に返さない様子で、堂々と突っ立っている。
そしてその少し幼さを残したような整った顔には、猫のような……
「猫耳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「しつこいわねっ!」
ゴッと、蹴りが屈んでいた俺の顔面にヒットする。
その際に見た、足の付け根のサンクチュアリを俺は忘れない。
大人のそれの一歩手前の、少しばかり薄い毛、それと白い太ももの成すコントラスト、それはどんな芸術作品にも勝るとも劣らなかった。
女の裸は、生ける芸術、昔の偉人は素晴らしいことを言う。
「ねえ、あんた」
あんたとは俺の事なのだろう。
「ええと、何?」
「今日から、あんたの家に世話になるわ」
一瞬思考が止まる。
たった今あったばかりの女の子と、同棲?
しかも、あっちから話を持ちかけてくるだなんて。
それだけじゃない、彼女には、猫耳が生えている。
現実と信じろという方が、難しい。
「ねえ、どうして君には耳が生えてるの?」
「猫だからよ」
あ、そうか。猫だからか、はははぁ。
そうだ、猫だから猫耳が生えている、至極当然のことではないか。
俺は確信した。この質問は無駄だ、と。
「ねえ、それより風邪を引いてしまうわ。早くあんたの家に連れて行ってよ」
彼女は、まるで俺のことを召使いであるかように言った。
仮にも居候になる身分で。
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