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よく晴れた日の午後の街角で、男が女に出会う。
やあどうも、と男は笑う。
女に、恋が芽生える。
二人は、それから色々な事を語り合う。
また逢おう、と男が言う。
次に晴れた日の午後にここで、と。
次に晴れた日の午後に、二人はまたその街角で出会う。
女に芽生えた恋は、その陽だまりの中でゆっくりと温まる。
男は笑いながら言う。それでは、次に晴れた日にまたここで逢いましょう、と。
次も、また次も、そのまた次も、二人は晴れた日の午後の陽だまりの中で、静かに色々な事を語り合う。
時が経ち、女はよくある事情で街を離れる事になる。
街を離れる日に女はその街角にたたずむ。
傘を打ちつける雨音が強くなり、弱くなり、また強くなった頃、引っ越し屋のトラックがクラクションを鳴らす。
女は遠く街を離れ、そこで新しい恋をして君を一生守るよと言われ、二人の間には新しい生命が誕生する。
女は、なだらかで時に退屈な日常の中へと埋もれて行く。
よく晴れた日の午後、女は洗いたての真っ白なシーツを陽だまりいっぱいに広げる。
女は、一瞬男の事を思い出す。
記憶の彼方にいるその男は、相変わらずあの街角の陽だまりの中で静かに笑っている。
その理由を考える暇もなく、女はまた日常の中へとなだらかに戻って行く。
サイダーの泡の軽さの五月哉
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