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ここは黄昏の街。夕日が美しく、風が優しい街です。ここに住んでいるある一人の少女、リリーという女の子がいました。リリーは笑顔を忘れた孤独の少女でした。毎日が寂しくて、愛せる人もいなくて、この街とは正反対の少女でした。風に吹かれる日々、空っぽな心、人々の冷めた目、そんな悲しいものがリリーを孤独に縛り付けました。
その日、リリーは太陽が暑くて、ある木陰に逃げ込みました。夕焼けさえ差し込まない木々の中に、リリーは一人でポツンと立っています。何気なく木の根元を見ると、ある花が咲いていました。
コスモスです。
まだ蕾(つぼみ)のままで少し弱々しい姿でした。リリーは思わず、その姿に自分を重ねてしまいました。
「あなたも一人ぼっち?」
リリーは消えそうな声でつぶやきました。蕾は何も答えません。風がでてきて、少し寒くなってきました。コスモスは優しく揺れました。
「こんな誰もいない所にも風は吹くんだね。またここに来てもいい?」
蕾は何も答えません。
ただただ風に負けないように強く根を張っています。
「じゃあ、またね」
リリーの一日は優しく日が落ちました。
つづく
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