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多分、燎斗は『分かるだろ』って続けようとしていた。
だが、そんな言葉がつむがれる前に、パチッと肌が荒々しく触れた、乾いた音が鳴った。
わけが分からないという、表情をした燎斗は頬に鈍い痛みと熱を感じ、百合の顔から手へ視線を移す。
「馬鹿じゃないの?」
一言。
それだけ言って、百合は走って部屋を出た。
後には、壊れそうなくらいに、荒く閉められた扉の音と、わけも分からずに、ただ目を見張っている燎斗だけが残された。
「ひどくない!?」
元から高い声を、更に高くし、叫ぶように言っているのは、百合だ。
座り心地の良いソファに深く腰掛け、燎斗の文句を言っている。
「確かに、ひどいですけど」
苦笑いしながら、聞いているのは胸より少し長い黒髪の女の子。
百合と燎斗の後輩である、宝珠だ。
宝珠が浮かべる苦笑いは、少し困っている様に見える。
当然だ。
いきなり、部屋に来て百合が『入れて!』と強引に入って来たのだから。
「もう、あいつ本ッ当にありえない!」
不快だと、声だけで現している。
「百合、俺宝珠と二人が良いんだけど」
百合の話しを聞いている宝珠に、後ろから抱き締める様に手を回したのも、百合達の幼馴染み兼後輩で、宝珠と付き合っている陵海だ。
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