*一 不思議な再会 *

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   クリスマス。  私はこの日を、ずっと前から楽しみにしていた。  私の家は両親が共働きな上、お兄ちゃんも大学の寮に入っていたので、滅多に家族と会わない。  私は家で、殆ど一人暮らし。  でも、毎年クリスマスだけは、お兄ちゃんが帰って来てくれた。 『お父さんお母さんの代わりに、僕と毎年クリスマスを祝おう』  遠い昔。  クリスマスの日に、寂しくて泣いている私と交わした、馬鹿な約束。  破る事なんて簡単だったのに、お兄ちゃんはずっと、守ってくれた。  優しくて、真っ直ぐで、春の日溜まりの様なお兄ちゃん。  この憧れが恋に変わるのに、そう時間はかからなかった。  毎年、言えなかったこの思いを、今年こそ告げようと決心したのに―。  こんな形で約束が破られるなんて、思ってもいなかったよ…。
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